『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』をクリアしたので感想を。
いや、ゲーム全体の感想というか、
巷で議論スクラムされている『最後の学級裁判で明かされた真実』についての私見を述べたいと思います。

以下、ネタバレに配慮は致しますが
断片的な情報でおそらくなんとなーくは内容が予測できてしまうと思いますので
未クリアの方はご留意の程お願い致します。
小高氏も「賛否両論だろう」と仰っていましたが、
僕自身、この超展開を受け入れながらも
「これ、大嫌いな人には絶対許されないだろうな」と考えながらの学級裁判でした。
ゲームにおけるストーリーで禁忌とされているものの一つでもあります。

まず頭に浮かんだのは、別作品ではありますが『かまいたちの夜2』騒動。
あちらはゲームを開始した直後の最初の一文で、シリーズファンをふるいにかけた問題作でした。
また、未プレイではありますが『スターオーシャン3』。
ゲームの出来は素晴らしいのにラストで台無しにされた、と言われている作品の筆頭です。

本作におけるそれもご多分に漏れず、
その真実が明らかになった際には僕も「うわーやっちゃったな…」と。
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完全にこんな顔してた。

ただ、僕が「やっちゃったな」と感じたのは何も今作が初めてではありません。
前作「スーパーダンガンロンパ2」にて真実が明かされた時も似たような感想を抱いたのです。
しかし、前提を覆すような真実で、荒唐無稽で、滅茶苦茶な展開でありながら、
物語を破綻させずに伏線を全力で回収しながらエンディングまで突っ走ってくれた爽快感。
ただただ圧倒されました。
ダンガンロンパすげーなー、と。

って経験があった上での今回の『真実』。

「うわーまたやっちゃった」と思いながらも、
ここからプレイヤーをどうやって納得させるのか、という点に否が応でも期待が高まった瞬間でした。

で、結末に関する私見でございますが、
この『ダンガンロンパ』の世界におけるコロシアイを終わらせる手段として
主人公の行動は正しいものだったと考えています。
賛成派です。



僕は、この『ダンガンロンパシリーズ』という作品群に関してある種のジレンマを抱えていました。

このシリーズのテーマが『希望』であるなら、
誰も死なずに黒幕を指摘し全員無事生存、という最高の結末がベストであるはず。
しかしその「最高の結末」は誰も求めていません。
『ダンガンロンパ』のストーリーで求められているのはあくまで
『コロシアイ』『おしおき』『絶望』、そして『希望』。
これら全て揃ってこその『ダンガンロンパ』なのです。

『1』において、多くのプレイヤーは当然苗木誠に感情移入していたと思います。
もちろん僕もその一人です。
そしてラスト、希望ヶ峰学園から『卒業』するシーンで、
僕は「黒幕の言っていた世界なんて嘘っぱちで、平和な世界が広がっていますように」
と願っていました。
そしてエンドロール。

もし『ダンガンロンパ』が売れずに、この一作目で終わっていたらどうでしょう。
苗木誠には「絶望の世界」で戦う未来と、上記のような「平和な世界」で生きる2つの可能性が残されたままで済んでいたはずです。

しかし、結果として苗木誠の希望を諦めない姿勢に勇気を貰った人々、
すなわち『ダンガンロンパ』ファンの声によって続編が制作され、
ついにはアニメ『ダンガンロンパ3』で彼は再びコロシアイに身を投じることになってしまいました。

僕は『ダンガンロンパシリーズ』のファンとして、
そしてプレイヤー=苗木誠として、このジレンマにずっとモヤモヤさせられていたんです。



ちょっと話が逸れますが、僕は『龍が如く』シリーズの展開でも同様の感想を抱いています。

初代をプレイした時の衝撃は今でも忘れません。
シェンムーロスを吹き飛ばしてくれたゲームの完成度にド肝を抜かれ、
エンディングにも感動させられました。
桐生と遥には、これから幸せな人生を歩んで欲しいと。

そんなファンの声にお応えして、2が発売されました。
主人公は桐生ちゃん。
僕は発売日に購入しなかったのですが、友人からの熱烈な勧めを受けてプレイしました。
滅茶苦茶面白かった。
さらに洗練されたシステムやグラフィックは、高かった前作のハードルをゆうに超え、
これまたエンディングにも感動させられました。
そして――今度こそ、桐生と遥には幸せな人生を歩んで欲しいと。

そんなファンの声にお応えして、3が発売されました。
主人公は桐生ちゃん。
うん、もうやりたくないですよね。


僕みたいな、作品の主人公に人一倍感情移入してしまうタイプの人間ほど、
こういう展開には参ってしまうはずです。
同じような人はいるはず。
幸せになって欲しいと願ってコントローラを置いたのに!
また厄介事に巻き込まれるんか!
もう許したってくれ!
と。



こういう「作品が続いていくことで、悲劇もまた続いていく」というメタ視点から見える負の連鎖は
悲劇的な世界観を同じくするシリーズものが抱える解決しようのないジレンマだな、と
いろいろなゲームをプレイしてきて常々ぼんやりと思っていたんです。
けどそれはどうしようもないことですし、
その世界にプレイヤーとして介入し、悲劇を乗り越えることこそが
ゲームというエンターテイメントの醍醐味なのであって。

僕が「僕の中の桐生一馬と遥には、もう不幸な目に合わせない」と決めたから『龍が如くシリーズ』のプレイをやめたように、
本当の意味でその世界を救いたければ、「そもそもゲームを存在させない」ことが重要な訳で。



で、話を『ニューダンガンロンパV3』に戻しますが、
まさかそれを作中の主人公が代弁してくれることになるとは思いも寄らなかった。
「そうだよ!コロシアイの螺旋を終わらせるにはそれしかないじゃないか!」と。

「希望に勇気を貰えるからダンガンロンパが好き!」みたいな意見は綺麗事であって
まず大前提としてファンが言葉にせずとも求めているのは
『絶望的なコロシアイに巻き込まれながらも――』という恐ろしさ。
もちろん、僕自身も日常パートでは「はよ誰か死なんかな」と思いながらプレイすることもありましたし、
それをモノクマに指摘されてドキッとする場面もありました。
極端な話、ダンガンロンパファンは全員本質は『狛枝凪斗』なんだと思います。

しかし、僕は最終章に至るまでの間にすっかり主人公に感情移入してしまった結果、
もう誰も死ぬ所を見たくないと強く願ってしまいました。
だからこそ、このコロシアイの終わらせ方は
ひとつの方法として個人的にはとても納得できるものだったんです。



もちろん冒頭に述べたように
そもそもこれをタブー視している方が多いのも理解しています。
否定派の気持ちもとても分かります。

だから、この『ニューダンガンロンパV3』のような作品は今後出てきて欲しくありません。
唯一無二であって欲しいですし、
このオチを扱った作品としてこれ以上(反対派にとってはこれ以下)の作品は出てこないでしょう。

僕は、この賛否両論を巻き起こすであろうテーマを
『ダンガンロンパ』というビッグタイトルに育ったコンテンツにぶつけてきた小高氏のことを
「馬鹿だろwww」とも思いますし、相変わらずすごい人だなとも再認識しました。
自分の手で苦労して作り上げたものをぶっ壊して、それをファンに突きつけて「賛成?反対?」と問う狂気。

彼は、『アルティメット人狼』なる企画に参加した際にも
こんな風に揶揄されるほどの人物です。

この田下氏の言葉を借りれば、僕は「小高さんのペース」に巻き込まれた一人なんだと思います。



という訳で、作品単体として見た時の僕の評価は「とても面白かった」です。
しかし、製作者自身の手でこんなめっちゃくちゃなストーリーにしてしまって
今後の『ダンガンロンパシリーズ』の展開がどうなるかというのも心配ではある。
やっぱ終わっちゃうのかな。

これまた矛盾していますが、「コロシアイなんて終わらせるべきだ!」と思っていた僕も
これを書いている時点では早くも次のコロシアイを求めています。
だって学級裁判面白いんだもの。

『龍が如く』に関しては、ゲームとしての面白さよりも、キャラに対する同情が上回ったのでプレイをやめたのですが、
『ダンガンロンパ』は逆なのかも知れません。
コロシアイを終わらせるという強い決意を抱く主人公に感情移入していたのも事実ですし、
絶望的な展開に心躍ったのもまた事実。
もっと絶望が見たい。
だって、僕らにとっては他人の悲劇だから。
所詮エンターテイメントだから。

続編を出すこと自体が『V3』のラストに対する大きな矛盾となる訳ですけれども、
一応出せなくはないですよね。
『V3』のタイトルの意味を知っていると。
出たら買います。



さて、長文になりましたがだいたいそんな感じです。
他にも細かな点で言いたいことはありますが長くなりすぎるので割愛。

某レビューにもあった、
「『賛否両論となる』という前提で作品を世に出すのは、金を払う人に対して失礼」という意見に関して
これはぐうの音も出ない正論だな、と。
今回の件はビジネスとしては失敗なんじゃないかなというのも正直な所です。
多くのファンがアンチ小高として絶望に染まったことでしょう。

もし、ダンガンロンパがこれで本当に終わりなら寂しい気持ちもありますが、
同時に小高氏の生み出す新しいコンテンツにも期待してしまいます。
王道を行く作品は他のメーカーから多数出ているんですし、
小高氏には徹底して滅茶苦茶なゲームを作り続けて欲しい所存。



あ、それと最後に。
ブレインドライブはいらん。
いらん。
神さまもそう言ってるよー!